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吉住 晴斗(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







吉住 晴斗(鶴岡東3年)投手 185/85 右/右 
 




                 「相当パワーアップしていたのでは?」





 昨夏の甲子園では、いなべ総合戦に1イニングリリーフ登板。その素質の片鱗を見せてくれた 吉住 晴斗 。最終学年を迎えた今年は、山形屈指の素材として期待された。しかしチームは、3回戦で早々敗戦。私自身彼の最終学年の投球を確認できずに終わってしまったが、地元局のHPには彼の勇姿が僅かながらダイジェスト映像に残されていた。その映像を見る限り、昨夏よりも、かなりパワーアップしていたのではないかと思わせる投球が映っていた。


(投球内容)

 昨夏は投げるときに、軽くトルネード風にひねって投げるフォームだった。しかし最終学年の映像を見る限りは、スッと足を引き上げて真上から叩き込む、正統派のフォームになっていた。

ストレート 

 昨夏の甲子園では、常時130キロ台後半~MAX141キロ程度だった。しかしこの夏の山本学園戦では、MAX145キロを記録。敗れた山形中央戦に至っては、MAX147キロまで到達したという。実際映像を見る限り、140キロ台中盤は出ているような勢いが感じられた。しかし打たれた球を見ていると、高めに浮いたところを痛打されており、パワーアップは図れたものの、コントロール・実戦力という意味ではどうだったのだろうか? という疑問は残る。特に敗れた山形中央戦では、5回を投げて8安打を打たれている。

変化球 スライダー、カーブ、チェンジアップ

 変化球は、横滑りするスライダーはこの夏も確認。また昨夏の投球をみると、他にもっと緩いカーブ、ショート系のチェンジアップだかツーシーム系のボールを投げていたように見える。ただしスライダーでカウントこそ稼げてはいると思うが、打者を仕留めるほどの変化球があるのかには疑問が残る。実際本人のコメントにはストレートを磨きたいとか、スカウトのコメントからもストレートの話しか出ておらず、この1年で変化球が何処まで磨かれているのかには不安が残った。

(投球のまとめ)

 見るからにポテンシャルを育んできた1年であったことはわかったが、何処まで実戦力を磨いてきたのかには疑問が残る。素材としての魅力は増しているが、かなり荒削りな素材型という印象に留まった。





(投球フォーム)

 昨年の投球と今年の数球の映像を元に書いているので、サンプル不足は否めない。そこで今年のフォームを分析することで、少しでも本質に近づけたらと考える。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまう。そのため身体を捻り出すスペースは確保できず、捻り出して投げるカーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方。

 その一方で広めにステップが取れており、「着地」までの粘りは悪くない。そういった意味では、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレ味鋭い、あるいは曲がり幅の大きな変化球の習得にも、身体を捻り出す時間が確保できているだけに期待が持てる。

<ボールの支配> ?

 映像の関係上、ハッキリとはわからなかった。しかしグラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすい。足の甲の押し付けも、時間は短いが地面を捉えているようには見える。それでも力を入れて投げるときにボールが上吊るのは、まだリリースでもボールが押し込めていない可能性は否定できない。しかしフォーム全体としては、非常に角が取れてスムーズなキレイなフォームに変わっていた。

<故障のリスク> ?

 お尻が落とせていないのだが、カーブやフォーク系の球をどの程度使っているのかはわからない。もし殆ど使っていないのであれば、肘への負担を悲観することはないだろう。

 腕の送り出しも、上から叩いている割に無理を感じさせない違和感のないもの。そういった意味では、角度をつけていても肩への負担は少ないのではないのだろうか。割合力投派なので、消耗は激しそうには見える。疲れを貯めて、そこからフォームを崩して故障に繋がらなければという感じはする。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 ステップを広めに取ることで、合わせやすいフォームではなくなっている。また身体の「開き」も抑えられてはおり、コースを間違わなければ痛打を浴び難いだろう。これでも被安打が多いのは、やはり根本的に制球力に課題があった可能性が高い。

 腕はしっかり振れており、投げ終わったあとに身体に絡んでいる。フォームや腕の振りに勢いがあるので、最後の夏も7回2/3イニングで9奪三振を奪えている。体重をしっかり乗せてからリリースを迎えているので、打者の手元までウエートの乗った勢いのあるボールは投げられているのだろう。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらなかった。それでもボールが上吊るということは、もう少し「球持ち」の際にボールを押し込めることが求められる。

 故障のリスクもそれほど高くはないし、カーブやフォークの習得が難しいフォーム故に、投球が一辺倒になったく単調になる危険性は感じられる。この辺が、イニング数以上に被安打を打たれてしまった大きな要因だったのかもしれない。今後緩急や縦の変化などを、いかに他のボールで代用して行けるかがポイントではないのだろうか。


(最後に)

 フォームの癖が薄まり、スムーズな速球派のそれになってきた。そしてそのことは、素直に球速のアップという形で現れている。そういった意味では、本人がプロ志望届けを提出すれば、何かしらの形で指名されるのではないかと思わせる素材の良さが滲みでていた。

 しかしこの夏の内容を見る限り、まだまだ素材型の域を脱していない。そういった印象は、どうしても拭えない。そう考えると、育成枠指名あたりに、落ち着くのではないかという気もするが、どうなるのか当日注目してみたい。しかし2年夏に観ていた頃に比べると、こちらの想像以上にイイ感じにパワーアップしていたように感じられ楽しみな投手になってきていた。


(2017年夏 山形大会)